VocalSyncによるオーディオの自動タイミング調整（Platinumのみ）

VocalSyncを使用すると、オーディオデータのタイミングを基準となるトラックに自動的に合わせることができます。この機能は、既存ボーカルトラックの置き換えまたはダブルトラッキングを行い、元のトラックと新しいトラックの間でタイミングを同期させたい場合に非常に便利です。

図476. VocalSync

VocalSyncの基本原理としては、まず、タイミングが正しいガイドトラックを指定し、次に、ガイドトラックに合わせるダブオーディオを指定します。すると、必要量のタイムストレッチまたは圧縮が適用され、ガイドトラックのタイミングに合わせてダブオーディオのタイミングが調整されます。タイミング調整の強さはユーザーが指定できます。変更されるのはダブオーディオのみであり、基準となるオーディオのピッチは変更されません。ガイドトラックはトラック全体ですが、ダブオーディオには任意のオーディオ（クリップ、タイム選択範囲、トラック全体など）を選択できます。

VocalSyncは主にボーカル用を意図したものですが、楽器やその他のオーディオソースに対しても優れた効果があります。

VocalSyncを使用する理由

ダビング（再録音）とは、追加録音または補足的な録音を既存の演奏にミックスしたり既存の演奏を置き換えたりするプロセスです。

通常、レコーディングセッションでのオーバーダビングはガイドトラックから始まり、演奏者はこれにできるだけ近くなるようにオーバーダビングを行います。ただし、人間が行うパフォーマンスでは、完全でない結果になるのが普通です。

ガイドトラックとダブの間に存在するタイミングの相違を補正するには、多くの場合、問題箇所のループ録音および手動による編集が必要になります。このような作業では、所要時間もコストも大きくなりがちです。

VocalSyncを使用すると、アーティストは前のパフォーマンスに完全に合わせることを心配せずに、自分のパフォーマンスに専念することができます。VocalSyncでは、元のガイドトラックにタイミングを合わせる処理をすばやく行うことができます。

VocalSyncは、リップシンクからダブルトラッキングまで、完全にタイミングの合ったオーバーダビングでパフォーマンスの創造に役立ちます。また、ダイアログやボーカルの再録音を行う際に必要になる時間を短縮することができます。

VocalSyncは、次のようにさまざまなオーディオタイミング調整に適しています。

ダブルトラックのリードボーカル、バッキングボーカル、または旋律楽器トラックのタイミングを完全に合わせたい場合。

録音済みのボーカルをミキシング用にリグルーブする場合。

同じリズムで演奏している複数のインストゥルメントトラックについて、揃い方を厳密にする場合。

ドラムマシントラックをライブドラムトラックに（またはその逆に）同期させる場合。

映画や動画のポストプロダクションで、置き換え用ダイアログのリップシンクを行う場合。

ボーカルパフォーマンスの声（場合によっては性別）を変更する場合。

 

メモ：ティンバーが大きく異なる楽器どうしでは、タイミング調整が困難になることがあります。

VocalSyncのしくみ

VocalSyncは、VocalSync Region FX クリップ（ダブ）のタイミングを任意のオーディオガイドトラックに合わせることのできる、Region FXです。

メモ：最善の結果を得るには、あらかじめガイドトラックとダブトラックの間でパフォーマンスのタイミングをできる限り合わせておく必要があります。ガイドトラックとして恣意的なものを使用することはできません。

2つのオーディオパフォーマンスのタイミングを調整する場合、VocalSyncでは、ガイドトラックとダブのオンセットとディケイが分析および比較され、ガイドトラックにできるだけ近くなるように必要量のタイムストレッチまたは圧縮がダブに適用されます。

AudioSnapでは、特定の公式（アルゴリズム）使ってオーディオのストレッチが行われます。オンラインプレビューには、プロセッサフレンドリーなアルゴリズムが使用され、オフラインレンダリングには、プロセッサ負荷の高いアルゴリズムが使用されます。

次の図は、同じフレーズについて行った2つの異なるレコーディングを示しています。波形は似ていますが、タイミングが少し異なります。説明用として緑色と黒色の線が波形に重ねてありますが、これらの線はSONARでは表示されません。緑色の線はオンセット、黒色の線はディケイを表しています。

 

 

メモ：他のオーディオタイミング調整ツールと同様、VocalSyncの場合も、元のオーディオ（ガイドトラック）とオーバーダブ（ダブオーディオ）の相違が小さい方が、良い結果になります。レコーディングでは、元のオーディオにできる限り近くなるように演奏する必要があります。ダブがガイドトラックに近くなるほど、VocalSyncの効果が表れます。

 

関連項目：

VocalSyncエディター

VocalSyncの使用

Region FXの使用

ARAオーディオランダムアクセス

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